個人事業主と法人どっちが得?年収別の損益分岐

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個人事業主と法人どっちが得?年収別の損益分岐を解説するアイキャッチ

個人事業主としてある程度稼げるようになると、「このまま個人で続けるのと、法人にするのとでは、どっちが得なんだろう?」という問いにぶつかります。法人化すると節税になるという話はよく聞きますが、実際には収入の規模や事業の状況によって有利・不利が入れ替わります。やみくもに法人化すればよいわけではなく、自分にとっての「分岐点」を知ることが大切です。

この記事では、個人事業主と法人で税金のかかり方がどう違うのかという土台から始めて、年収・所得別に見た損益分岐の目安、節税以外のメリットとコスト、そして社会保険料の最適化を狙う「マイクロ法人」という考え方までを中立に整理します。なお、税制や保険料の具体的な数字は改正や個人の状況で変わるため、本記事の金額はあくまで目安として読み、最終的な判断は最新の公式情報と専門家への相談を前提にしてください。

個人事業主と法人は「税金のかかり方」がそもそも違う

「どっちが得か」を考えるうえで、まず押さえておきたいのが、個人と法人では税金の仕組み自体が異なるという点です。同じ利益が出ていても、かかる税金の計算方法が違うため、ある金額を境に有利・不利が逆転します。この逆転する地点が損益分岐点であり、法人化を判断する際の中心的な目安になります。

個人は累進課税、法人はおおむね一定

個人事業主にかかる所得税は「累進課税」です。これは、もうけ(課税所得)が増えるほど税率も段階的に上がっていく仕組みで、所得が一定額を超えると税率が大きく跳ね上がる区切りがあります。たとえば課税所得が900万円を超えるあたりで、所得税の税率が一段と高い区分に入るとされています(具体的な区分や税率は公式情報で確認してください)。住民税も合わせると、もうけの多い人ほど負担割合が重くなっていきます。

一方、法人にかかる法人税は、所得が増えてもおおむね一定の範囲の税率に収まります(中小企業には所得の一部に軽減された税率が適用されるなどの仕組みがあります)。つまり、利益が小さいうちは個人のほうが税率が低く有利ですが、利益が大きくなると法人のほうが税率を抑えやすくなる、という関係になります。

税率が逆転するポイントが「損益分岐点」

このように、個人の税率が上がっていく一方で法人の税率はおおむね一定なので、どこかで両者の負担が逆転します。利益が少ないうちに法人化すると、後述する法人特有の維持コストのほうが節税額を上回ってしまい、かえって損をすることもあります。逆に利益が十分に大きくなれば、法人化による節税効果が維持コストを上回り、得になります。だからこそ、「自分の利益はどのあたりにいるのか」を把握することが判断の出発点になるのです。

年収・所得別に見る損益分岐の目安

損益分岐の目安は情報源によって幅がありますが、おおまかな傾向は次の表のように整理できます。あくまで一般的な目安であり、事業の経費構造や家族構成、扶養の有無などによって最適な判断は変わります。

課税所得・売上の目安一般的に言われる傾向
課税所得 〜500万円程度個人事業主のままのほうがシンプルで有利なことが多い
課税所得 500〜800万円程度事業内容によっては法人化の検討余地が出てくる帯
課税所得 800〜900万円超節税目的の法人化で効果が出やすいとされる代表的な目安
課税売上高 1,000万円超消費税の観点から法人化のタイミングとして語られることが多い

表のとおり、節税を主目的にした法人化は、課税所得がおおむね800〜900万円を超えるあたりが一つの代表的な目安とされています。また、課税売上高が1,000万円を超えると消費税の納税義務に関わってくるため、このタイミングを法人化の検討材料にする人もいます。ただし、これらの数字は制度や個別事情で変わるため、目安として参考にしつつ、実際の判断はシミュレーションと公式情報をもとに行ってください。

節税以外の「得」と、見落としがちな「コスト」

法人化のメリットは節税だけではありません。取引先からの信用力が上がって仕事の幅が広がる、決算月を自由に決められる、退職金の制度を設けられるなど、事業運営の面での利点もあります。社会的な信頼という意味でも、法人格があることで取引や採用がしやすくなる場面があります。

一方で、法人には個人事業主にはないコストが発生します。代表的なのが、赤字でも毎年かかる住民税の均等割や、経理・決算を税理士に依頼する費用です。会社の経理や決算は個人より複雑になるため、多くの場合は税理士へ依頼することになり、その費用が継続的に発生します。法人を維持するためのランニングコストは、これらを合わせると年間で一定額にのぼります。損益分岐点という考え方が成り立つのは、まさにこうした維持コストがあるからです。法人化を検討するときは、節税で浮く金額とこの維持コストを並べて比べることが欠かせません。

具体的に税理士へ「丸投げ」した場合の費用感や、設立そのものの費用をどこまで抑えられるかは、実際に合同会社を運営している筆者がリアルな金額を公開しています。コスト側の見積もりを具体化する材料として役立ちます。

「マイクロ法人」は損益分岐の考え方が少し違う

ここまでは節税を主目的にした法人化の話でしたが、近年は「マイクロ法人(ひとり法人)」という使い方も広がっています。これは事業の拡大ではなく、税金や社会保険料の最適化そのものを目的にした法人で、節税型の法人化よりも低い所得水準から検討の余地があるとされます。

ポイントになるのが社会保険料です。個人事業主は国民健康保険と国民年金に加入し、所得が増えるほど保険料も上がっていきます。一方、法人にすると会社の健康保険と厚生年金に加入し、保険料は役員報酬の額に応じて決まります。そのため、役員報酬を低めに設定することで社会保険料を抑えられるケースがあります。ただし、保険料を最低限にすると将来受け取る年金も最低限になるなどのトレードオフがあり、いくらに設定するのが自分にとって最適かは慎重に考える必要があります。役員報酬の設計は、マイクロ法人の損得を左右する最重要ポイントです。

判断の前に知っておきたい注意点

法人化の損得は、平均的な目安だけでは決められない部分があります。とくに次の点は誤解されやすいので注意してください。まず、会社員として勤めながら別にマイクロ法人をつくっても、すでに勤務先で社会保険に加入している場合は、思ったほど保険料の節約にならないことがあります。状況によっては両方で負担が生じるため、副業として法人を持つ場合は仕組みをよく確認する必要があります。

また、社会保険料を抑える設計は、将来の年金額が下がるという裏返しの面を持ちます。目先の負担だけでなく、長期的な受取額まで含めて考えることが大切です。税金や社会保険は個人の家族構成・所得・事業内容によって最適解が大きく変わるYMYL領域なので、本記事の目安をたたき台にしつつ、最終的な判断は税理士などの専門家に相談したうえで行うことを強くおすすめします。

まとめ:自分の「分岐点」を数字で確かめる

個人事業主と法人のどちらが得かは、一律には決まりません。利益の規模、節税で浮く額と維持コストのバランス、そして社会保険料の最適化をどこまで狙うかによって、最適な答えは人それぞれです。大切なのは、世間の平均値ではなく「自分の数字」で分岐点を確かめることです。

  • 税のかかり方が違う:個人は累進課税、法人はおおむね一定。だから利益が増えると逆転する。
  • 節税型の目安:課税所得おおむね800〜900万円超、課税売上高1,000万円超が代表的な検討ライン。
  • コストも必ず比較:法人は税理士費用などの維持コストがかかる。節税額と並べて判断する。
  • マイクロ法人型:社会保険料の最適化が目的なら、より低い所得からでも検討余地。カギは役員報酬の設計。
  • 制度・保険料は変動するYMYL分野。最終判断は公式情報+専門家への相談を前提に。

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