海外のタバコの箱のパッケージを見たことがあるでしょうか?
真っ黒になっている肺の写真など、タバコはいかに身体に悪いかということを警告するための写真が載せられています。
そんな写真が載っていると「ちょっと買ってみようかな?」とは、とてもじゃないけどならないと思います。
このパッケージ、タバコを売るためには逆効果のような気がしますが、国によっては警告を載せることが義務付けられているのです。
では、このような警告はタバコを止めるのに効果的なのでしょうか?
一見すると、健康への悪影響が分かりやすく警告されているので、買うのをためらわせそうですよね?
しかし、実は、このような健康に対する警告は、やめるのには逆効果になる可能性があるのです。
今回は、タバコや食べすぎのような、健康に悪いとわかっているのにやめられない習慣、悪習を断ち切る際の注意点について解説します。
なぜ身体に悪いとわかっているのにやめられないのか
タバコを吸っている多くの人は、タバコは健康に良くないことは理解していると思います。
また、太りすぎてダイエットをしている人も、食べ過ぎが続くと病気になるリスクがあることも分かっているはずです。
では、なぜ身体に悪いことが分かっているような悪い習慣をやめられないのでしょう?
答えは単純です。
その行動によって自分にとってプラスになる効果があるからです。
例えば、タバコを吸うことによって気持ちが落ち着く、イライラがなくなるという人もいます。また、夜中に甘いものを食べることで、空腹による苦痛を和らげ、幸せを感じることもあるのです。
しかも、タバコを吸ったり、甘いものを食べたりすることで得られる効果は即効性がある点もポイントです。
確かに、身体に悪い習慣を続けていると、将来的には健康への被害があるかもしれません。しかし、あくまで未来の話です。当人にとっては、今現在自分に起きている問題の方が、切実なのです。
そのため、やめなくてはと思っていても、不安や恐怖、苦痛から逃れることができるとわかっていたら、ついつい手を出してしまうようになります。
そういった意味では、勉強などと似ていますね。将来役に立つから勉強しておくべきと思っても、勉強に苦痛が伴う場合、漫画やネットサーフィンのような目の前の快楽に逃げてしまうのです。実際に困ると勉強しますが、将来的に何となくまずいといった未来のことは、現実感がなくイメージしにくいのです。
「健康に悪い」というネガティブなメッセージは逆効果
そもそも、健康に悪い習慣をなぜやめようとするのでしょうか?
当然、将来病気になって苦しんだり、不自由な思いをしたくないからですよね。将来の不安や恐怖といったリスクを取り除きたいからです。
そのため、ついやってしまうので、どれだけ自分の行動が将来の不安や恐怖のリスクに繋がるかといったことを強く認識させることです。
しかし、健康に関する悪い習慣をやめるために、将来の不安や恐怖といったネガティブなメッセージは与えることは逆効果になる可能性があるのです。
ネガティブな感情は、自己破壊的な行動をとらせる
米国のカリフォルニア大学で行われた研究で、減量をすると誓っていた肥満の女性に対し「肥満の従業員に対して差別待遇が始まっている」という内容の記事を読んでもらいます。
すると、肥満に関するネガティブな記事を読んだ被験者は、肥満とは無関係の記事を読んだ肥満女性に比べ、その後の実験で2倍のカロリーのジャンクフードを食べてしまったのです。
また、タバコのパッケージの警告に関しても、多くの医師が「タバコを吸いたい気持ちを抑制する効果がある」と考えています。
ところが実際は、警告表示を見た人はタバコを吸いたい衝動が強くなるという逆効果をもたらす場合が多いということが、研究によって明らかになっているのです。
なぜ自己破壊的な行動に走るのか
多くの人達は、健康への不安や恐怖などのネガティブな情報を与えることは、悪い習慣をやめるのに役立つと考えています。
しかし、恐怖や不安などを感じたり、自己批判に陥るような状況になったら、人はどのような行動をとるでしょう。
不安や恐怖といったネガティブな感情を取り除こうとするのです。
そして、タバコを吸っている人であれば、不安な気持ちを落ち着かせる方法はタバコを吸うことです。
ダイエットをしている人であれば、甘いものをたくさん食べることで幸せを感じることができます。
そうなんです。将来の健康リスクについて警告し不安や恐怖をあおることは、かえって健康に害のある行動を促してしまう可能性があるのです。
実際にいくつかの科学実験において、健康に関するネガティブなメッセージを受け取った人は、医師達が治そうとしていた健康に悪影響のある問題行動をとってしまうといった結果も得られています。
悪い習慣を断ち切るためには
悪習を断ち切るための方法を一つ紹介します。
心理学者のジャドソン・ブルーワー氏が提唱しているマインドフルネスを使った方法です。マインドフルネスとは、簡単に言うと意識を一つのことに向けること、集中することです。
例えば、禁煙したい人に、喫煙したくなった時、喫煙した時に「自分がどんな風に感じているか」に意識を向けてもらうと、「喫煙はなんて悪いことだろう」と気づき、やめることができるようになる人もいるようです。
元々タバコをやめたいと思っており、喫煙の害については頭で理解している人が、意識を強く向けることで、体の奥底から更に深く認識するようで禁煙できるようになったようです。
悪い習慣を断ち切る方法というのはいくつか種類があるので、自分に合った方法を見つけてみて下さい。
人によって適切な方法は異なるので、一つの方法でうまく行かないからといって諦めないで、他の方法を試してみることが最も大切です。
おわりに
悪い習慣をやめたいと思う時は、その習慣を続けていると将来自分にとって良くないことがあるからです。
しかし、悪い習慣を断ち切るためのモチベーションを上げるため、いたずらに将来の不安や恐怖をあおると逆効果になってしまう可能性があるといった研究結果もあるのです。
悪習を改善しようとする場合は、このような研究結果があるということを踏まえて、自分にあった方法を探してみて下さい。
このような研究が増えてくると、もしかしたらタバコのパッケージも変わってくるかもしれないですね。