血液型は自分で選ぶことはできない、先天的なものです。
しかし、その血液型が人の寿命や病気のかかりやすさに関係していると聞いたらどうでしょう。
すぐには信じられないかもしれません。
しかし、血液型が人の寿命や病気に影響を及ぼすといったデータはたくさんあるのです。
そこで、今回は血液型に関する寿命や病気のリスクなどについて紹介します。
血液型の分類、分布
ABO式血液型
血液型はいくつかの分類方法があるが、一般に用いられているのが「ABO式血液型」です。
この方法では、赤血球の表面抗原の種類で4型に分類しています。
- A型:
赤血球の表面にA抗原を発現する遺伝子を持っていて、血漿中にB抗原に対する抗体が形成される - B型:
赤血球の表面にB抗原を発現する遺伝子を持っていて、血漿中A抗原に対する抗体が形成される - O型:
赤血球の表面にA抗原とB抗原のを発現する遺伝子のどちらも持っておらず、血漿中にA、Bそれぞれの抗原に対する抗体が形成される - AB型:
赤血球の表面にA抗原とB抗原の両方を発現する遺伝子を持っていて、血漿中に抗体は形成されない
型を決定する遺伝子(対立遺伝子)はA、B、Oの3種類あり、遺伝子型(生物が持つ遺伝子の構成)は、AA、BB、AB、AO、BO、OOの6種があります。
そのため、両親の血液型と、生まれる子供の血液型には以下の関係があるとされています。
(二対対立因子説による遺伝)
両親の 組み合わせ |
生まれる 子供 |
両親の 組み合わせ |
生まれる 子供 |
A×A | A、O | B×O | B、O |
A×B | A、B、O、AB | B×AB | A、B、O、AB |
A×O | A、O | O×O | O |
A×AB | A、B、O、AB | O×AB | A、B、O、AB |
B×B | B、O | AB×AB | A、B、O、AB |
血液型の比率
世界的にみると、ABO式血液型の遺伝子分布は地域や人種によって差が大きくなります。
例えば、中東のパキスタンでは「A型:27%、B型:34%、O型:30%、AB型:9%」なのに対し、南米のベネズエラでは「A型:30%、B型:6%、O型:60%、AB型:2%」となります。
ただ、地域毎にばらばらでまったく統一性がないというわけでもなく、世界的な分布には凡そ次のような傾向があります。
- A型遺伝子:ヨーロッパに多い(35~50%)
- B型遺伝子:北部インドからモンゴル(30%)
- O型遺伝子:世界的にどこでも多い
日本人のABO式血液型の分布に関して、おおよそ次のようになっていますが、わずかに地域差があり、九州・四国・中国ではA型が多くO型が少ない、東北・北陸ではO型がわずかに多くA型が少ないとなっているようです。
- A型:37%
- B型:22%
- O型:32%
- AB型:9%
参照 Wikipedia「ABO式血液型」
血液型と寿命の違い
血液型別の平均寿命について見ていきましょう。
海外での寿命と血液型の関係
「The Answer in your Bloodtype」という本(1999年出版)の中で、5000人のアメリカ人を対象に調査では、平均寿命と血液型の関係は次のように結果になっています。
- O型:86.7歳
- B型:78.2歳
- AB型:69.5歳
- A型:61.6歳
なんと、この調査では、O型とA型では寿命に25歳も違いがあるといった結果になっているのです。
この寿命の差は、消化能力の違いによるもので、A型は野菜や果物は消化しやすいが、肉類は消化しにくく脂肪としてため込んでしまい、肉食が中心のアメリカではA型の平均寿命が短くなっていると考察しています。
また、ヨーロッパでの平均寿命と血液型の相関関係に関する研究では、次のような結果が得られています。
- O型が多い国は長生きの傾向
- A型の人数には寿命への相関は確認できず
- B型やAB型が多い国は、少し短命
欧米で共通することとしては、O型は長寿の傾向にあるということです。
日本の血液型と寿命の関係
ニッセイの基礎研の「長寿科学研究からみる予防行動と健康指導の新たな視点」の報告によると、100歳以上の人数と血液型に関する調査結果(1992年)は次のようになります。
- A型34%
- B型29%
- O型29%
- AB型8%
この報告では、100歳以上はA型が一番多いという結果になります。
しかし、血液型の人口比率が異なりますので、これに日本人の血液型の割合を加味すると、B型が最も長寿の可能性が高く、O型、A型、AB型はあまり差がないといった結果になります。
海外の報告と違い、日本ではO型が長寿といった結果にはなっていないようです。
血液型で免疫力が変わる
血液型が寿命に関係する可能性の一つに、病気にかかりやすさがあります。
『えっ!血液型で病気になりやすさに差があるの?』と思った人もいると思います。
血液型により病気へのかかりやすさには違いがあるのです。
違いがでる主な理由は、次のようになります。
- 血液型毎に免疫力に差がある
- 個々の病原体には特定の血液型を持っている、または好む傾向にある
例えば、食中毒を引き起こす大腸菌の菌体はA型物質でできているので、A型の人は同じA型の大腸菌の侵入を防ぐ抗原抗体反応が働かず大腸菌による食中毒になりやすい、といった具合です。
O型は最も免疫力が高い
最も病気にかかりにくい血液型はO型になります。
これは、A型とB型が片方ずつの抗体しか持たないのに対し、O型はA・B両方を持っているからです。逆にAB型はAとB、どちらの抗体も持っていないため、最も免疫力が低くなってしまいます。
がんになりにくい
O型はすい臓がんになりにくいといったデータが、09年に米国国立がん研究所から発表されています。
約10万人を8年間追跡調査した結果では、O型を基準とした場合のすい臓がんのなりやすさは次のようになります。
- A型:1.3倍
- B型:1.7倍
- O型:1.0倍
- AB型:1.5倍
B型は、O型と比較した場合、1.7倍もすい臓がんになりやすいといった、驚きの結果です。
また、米国立衛生研究所が行ったイラン北東部で暮らす中年および高齢者5万人を約7年間追跡調査した研究結果では、O型以外の血液型はO型と比較すると55%も胃がん発症リスクが高く、O型はもっとも胃がんになりにくい、との報告もあります。
ちなみに原因は不明ですが、日本人は血液型に依らず胃がんリスクが高いそうです。
心臓発作(心筋梗塞)、脳梗塞のリスクが違う
2008年に米ハーバード大学医学部関連医療機関『ダナ・ファーバーがん研究所』により行われた4900人の心疾患のイタリア人を対象とした調査で、A型の人はO型の人より血栓症のリスクが1.5倍高いと報告されています。
さらにA型は、糖尿病にかかるリスクも高いことが報告されています。
血栓症、糖尿病は、どちらも脳梗塞、心筋梗塞を引き起こす可能性があり、A型の人は他の血液型に比べ、脳梗塞、心筋梗塞のリスクが高いです。特に、心筋梗塞に関しては、O型の20倍のリスクがあるとの報告もあります。
デンマークとスウェーデンの研究でも、O型はその他の血液型より血栓が30%できにくいといったことが報告されています。
また、米インターマウンテンメディカルセンターが行った、臨床データ(1993年~2007年)を元に調査では、O型以外の冠動脈疾患患者は、大気汚染で心臓発作を起こしやすいと報告されています。
これは、血液型を決定するA遺伝子とB遺伝子は、冠動脈疾患の患者の心臓発作と関連する唯一の遺伝子であるため、この両方の遺伝子を持っていないO型は心臓発作のリスクが低かったためと考えられています。
前述の米国立衛生研究所のイラン北東部の住民の調査では、O型と比較して、その他の血液型では健康上の理由で亡くなる確率が9%、心疾患で亡くなる確率が15%高かったという報告もされています。
アルツハイマー(変形性脳疾患)になりにくい
英シェフィールド大学の研究ではO型はアルツハイマーなどの変形性脳疾患になりにくいといった結果が発表されています。
189人の英国人の脳をスキャンした結果、O型の人々は灰白質が多く見つかりました。
この灰白質は神経細胞の集まりで、情報処理を担っており感情と行動の相互作用に影響するため、年をとっても認知などの情報を処理する能力が低下しにくく、ボケにくいといったことにつながるようです。
O型にもリスクはある
O型のメリットばかり述べてきましたが、O型はメリットばかりではありません。当然デメリットもあります。
緊急搬送時の死亡リスクが高い
東京医科歯科大学の調査によると、入院が必要な重症患者901名(2013〜2015年度)の死亡率は、O型が28%、それ以外の血液型は11%といったデータが報告されています。
ケガをして血管が破れると、血液中の血小板が集まって、血が固まることでキズをふさぎますが、O型の人は血小板をくっつける働きをするタンパク質の一種が少ないのです。
O型は、血が固まりにくいので、血栓などは起きにくいが、怪我をした場合は大量出血につながるケースが多くなってしまうのです。
胃潰瘍、十二指腸潰瘍になりやすい
東京大学、理化学研究所、愛知県がんセンターの共同研究では、O型の人はA型に比べて十二指腸潰瘍のリスクが1.4倍という結果が報告されています。
また、O型はA型に比べ、胃潰瘍は15%、十二指腸潰瘍は30%も多いといった報告もあります。
これらの潰瘍を起こす原因ははっきりしていませんが、胃酸や遺伝子が原因ではないかと考えられています。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍は、胃酸により胃や十二指腸の組織が剥がれ落ち、内部がえぐられた状態を指しますが、O型の人はその原因となる胃酸濃度が高い傾向があります。
また、前述のようにO型は胃がんになりにくいとされているため、胃がんを引き起こすリスク遺伝子(PSCA遺伝子)が少ないと考えられます。
しかし、このリスク遺伝子は、細胞の分裂増殖を活性化しがん細胞を増殖させる一方、細胞分裂を早めることで、胃酸でダメージを受けた十二指腸の修復を活性化させる作用があるのです。
よって、O型は、胃がんになりにくいが潰瘍になりやすい、と考えられています。
A型、B型、AB型の特徴
それでは他の血液型はどうでしょう。
免疫力の強さは、上からO型、B型、A型、AB型の順となっており、AB型が最も病気に対するリスクが高いですが、O型同様、B型、A型にも特定の病気に対するリスクが高い傾向があります。
B型のリスク
日本では長寿の傾向にあるB型ですが、残念ながら、B型を好む病原体はかなり多いので、リスクも高いのです。
- 肺炎を起こす原因となる肺炎球菌はB型であり、肺炎、結核など肺の病気にかかりやすい。結核に関しても、O型に比べてB型のほうが10%感染率が高い。
- B型は梅毒にもかかりやすく、O型に比べて1・7倍もリスクが高いとのデータも存在する。
- サルモネラ菌、大腸菌の中にB型を好むものがいるため、B型の人は食中毒にかかりやすい。
A型のリスク
A型は他の血液型と比べて以下の疾患が多いというデータがあります。
- 胃がん
- 食道がん
- 子宮がん
- 唾液腺がん(O型の1.6倍)
AB型
そもそも一番免疫力が弱いうえ、A型、B型どちらの抗体も持っていないため、総じて弱いです。
- 多くの感染症などに弱く風邪を引きやすい
- エイズの感染リスクを高める梅毒に極めて弱い
だからといって、すべての感染症にかかりやすいかと言えば、そんなことはありません。過去に世界的流行を引き起こした古典型コレラは、ほかの血液型よりAB型のほうが抵抗力が強いのです。
まとめ
研究結果や調査結果では「O型が最も免疫力が高く、長寿の傾向がある」といったデータが多いですが、必ずしもそうなるとは限りません。
当然、食生活や生活習慣といった個人差や地域差などもあるからです。
ただ、血液型で免疫力に違いはありそうなので、自分がどういった病気のリスクが高いかは把握し、予防することで、長生きを目指しましょう。